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from下町の一角。
とある休日、そんなお昼時。下町は今日も沢山の人達で賑やかである。
それはここに居を構える、一件の呉服屋の奥でさえも例外では無かった。
「だぁっちゃあああ!?」
「馬鹿者。焼き上がったサツマイモをそのまま素手で取る奴が居るかい」
呆れ半分な顔で台所に転がったサツマイモを、洗ったキッチンタオルで包んで拾う。
幾ら体が頑丈だからと自負していようと熱い物は熱い。
それが250℃前後のオーブンで暖めたばかりの物なら尚更だ。
「あー…そりゃそーだった。 ついトースターからパンを取る感覚でやっちまったぜ。」
「全く…手際良くやりなとは言ったけど、安全確認まで削れとは言ってないよ?」
「へーい…。」
ぽりぽりと頬を掻く様子に項垂れる様な声で目の前の『孫』から返事が返ってきた。
普段なら私が居ない時であっても、それなりに料理が出来るようには仕込ませた。
手先も元々器用な癖に、時折変な所で不器用と言うか早計と言うか。
あまり体験してないっていう理由があるのも、わかるんだがねぇ…。
「にしてもこーしてやってみると…なんつーか、やっぱ野菜炒めとか作るよりは格段に手間が掛かるよなぁ。」
「そりゃそうさね。 …一日そこらで完璧になれりゃ苦労はしないさ。」
「…ま、それもそーか。 そんじゃ次はえーと…オーライ、裏ごしだな。」
気を取り直したかのように、三角巾を締め直して皮を剥いたサツマイモを擂り潰す背中を私は見遣る。
そう、あくまで見遣る『だけ』。
『おかしい所があったら指摘だけして欲しい』なんて本人からの希望があったのだ。
ある意味それは意地でもあるのか。 終始、喋っている時以外は真顔のまま、この子は作業を続けている。
「っしゃ! 後はこいつを冷蔵庫に入れて… あー、ここまででやっと下ごしらえまで終わった…。」
「はい、ごくろうさん。 …思ってたよりはスムーズに行ったじゃないか。」
「これでスムーズ…って、何だよもっと時間がかかるって思ってたのか…?」
「そりゃそうだろう。 菓子作りは今までした事が無かったんだろう? ぐずぐずする…とまでは思って無かったが、相応の時間はかかると踏んでたさ」
「さいですか…。」
「…おやおや、無理そうならここからは私が手伝っても構わないけど?」
「No thanks. …大丈夫だぜ? っていうかまぁ…アレだ。」
「アイツもこんな風にして何時も作ってくれてんだよなって考えたら、ますます燃えてきた所さ。」
ぜってー『旨いっ!』って言わせてやんよ!
そんな風に屈託なく笑うこの子の言葉に、私はただ「そうかい」と返して湯呑みを傾けた―。
「…おと、携帯鳴ってら。 ちょっと行ってくるわ、ばっちゃん。」
「はいよ。 …あんまりだらだら長電話はしないよーに。」
「オーライ、判ってる。 …あー、もしもし? 悪いなかけ直して貰って。 嗚呼、よかったら今度さ――。」
お返しついでに、遊びに誘うヒトコマ。
何気に初登場の『ばっちゃん』に監督されながら、こんなものが出来てる
【ttp://www.bob-an.com/recipe/OutputMain.asp?KeyNo=03575】