忍者ブログ
気ままな誰かが気の向くままに何かを書く場所。PBCサイト『真!学園戦国伝』に居る誰かの住処。
[40]  [39]  [38]  [37]  [36]  [35]  [34]  [33]  [32]  [31]  [30
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

書き上がってなかった末っ子長女のお話を載せておく。
……お話と言うか、一こま。




「ごきげんよう――。」

最近になって変わった事と言えば、これだけだろうか。
普通に暮らしている中では滅多に使われない畏まった挨拶は、この辺りでは私達ライラ生の目印でもある。
行き交う多くの生徒や先生、果ては用務員の人達ですらも会話を始める時はこの挨拶から始まる。
故に、ライラの校内では年中そこらで色んな人の「ごきげんよう」が聞ける。

正直最初は違和感でしかなかった光景だった。
けれども時間と言うのは不思議な物で。入学してから早一年経った今では、自然に受け入れている自分が居る。

ただ、それでも普通に使う挨拶とは言い難いから。
他校の人達の中には、何年経っても聞きなれない人も居るみたい。
――事実、私自身もそう思ってるし、卒業する時までその意見は変わらないんだろう。

けれども…そんな厳かかつ違和感のある挨拶を、最近は私も使うようになった。

「ごきげんよう。……うぅん。やっぱ口に出すと慣れないわコレ……。」

コートのフェンスに背中を預けたまま呟く。
――現在テニス部は活動の真っ最中。 
合間に与えられた休憩時間に呟きを残してはぼんやり空を見上げる私が居た。

「うぉーいそこな黄昏人ー、なーにやってんのーん?」

「…? あぁ、加子か…。」

声聞えた方を振り向けば、テニス部指定のテニスウェアに身を包んだ女子が一人。
私と練習チーム及び試合でのペアを組んでいる、同じく2年の鷺沢加子(さぎさわ・かこ)である。
私よりも少しばかり高い背と、淡いミディアムの黒髪を無造作に降ろしている……結構に活発な子だ。
少なくとも第一印象は、そんな感じだっただろうか。


「あぁ加子か、じゃないでしょー。 そろそろ休憩時間終わりだってーから呼びに来たってーのにー。」

軽い悪態を付きつつ『うぃー』、なんてタオルで顔をごしごし擦ってる辺り親父くさいと思ったのは内緒である。

「それは悪かった。…てか、もうそんな時間なんだ。……あー、やっぱ最近疲れてんのなかなぁ、あんま休んだ気がしないわね」

背筋をストレッチ気味に伸ばすのも、これで何度目か。
2年生に進級してからは、勉強の方も一段と難しさを増して来て、連日が課題と戦う毎日は変わらないまま
それに加えて授業でさえも、予習をしておかないと耳に入れる事すらも難しくなってきていた。
…まぁそんな私が進級出来たのも、偏にとある留学生(らしい)男子の協力(指導?)のおかげなのだが。

「おいおいー。若さ溢れる若者がなーに言っとりますか。……けど確かに、今日はちょーっと日差しが強いかもねー…。」

気だるげに日差しを眺めてだらーりとする辺り、貴方も同じじゃない…?とは突っ込みたかった。
あっついあっつい、と着ていたスコートの裾を掴んでばっさばっさと叩く始末だし。
見られるわよ…?と、声を潜めて加子に注意をすれば「へーきへーき」とか、楽観的な応えが返って来る。
予想はしてたけれども、こうも思ってた通りの答えを出されると逆に溜息を着いてしまうのは何故だろうか。

「にしても、椎那って何時もジャージだよね。テニスウェア着てくればいいのにー。」

突然何を思ったのか、じーっと目の前私の白赤ジャージを見つめてくる加子の視線。
…一応捕捉して置くと、私の所属するライラのテニス部は基本的に運動用に相応しい服装であれば自由だ。
かと言って、華美な服装は顧問やコーチから駄目出しを受けるので、専らユニフォームかジャージもしくはそれに準ずる服装かに別れる。
多くはライラで指定されている体操服だったり私みたいなジャージだったりが多くの割合をしめては居るけれども。
加子みたく、練習用にテニスウェアを試合用とは別途に用意している子も珍しくは無い。
まぁ、確かに…私みたいな露出の少ないジャージよりも、テニスウェアとスコートの組み合わせの方が可愛くはあるのだ。
その魅力に引かれて、わざわざ用意する人が居るのも理解は出来た。

「べ、別にその辺りは自由だって先生も言ってたじゃない。…わざわざ試合用の物着る必要なんて無いんだし。」

故にテニスと言えばテニスウェアとスコート姿と言うイメージが強い部分もあるのだろう。
……が、実際に試合以外で着る事は少なく、また必ずしもウェア姿で在ると言う事に(機能性を除けば)深い意味は無い。
そもそも練習は汚れてもいい服である事が前提なのだから、わざわざ試合用の服を使う事も無いと言うのが私の考えだ。

そう言えば、見学の子の一人から「スカート履いて運動するのって、勇気要りませんか…?」とか真面目に聞かれたりもしたっけ。
一応「少なくともウチは『キュロットみたいな物』だから心配は無いわよ」って答えては置いたけど。
そもそもスカートとスコートは厳密には少しばかり違うのだし。

――閑話休題。
ともかく、私は基本的にテニスウェアは試合で気合入れる時以外には着ない。
どうやらパートナーである加子には、それが不思議に見えているみたいだった。

「…それに…アンタ、私が丈短いヤツ苦手だって事、知ってるじゃない。」

スカート自体は嫌いじゃないけども、短いのは別の意味で動き難くて苦手だ。
まぁ私達が使う物は、スコートと短パンが合体したような所謂「スコートパンツ」だから違う意味での心配は要らないのだけれど。

「あぁ…そう言えばそうよねー…制服のスカートもきっかり膝丈だしさー。 隙見て捲っても白の短パン常備だしー」
「ちょ、そこまで確認しなくてもいいわよ!? てか、そもそも捲る事自体が間違ってるでしょーが!!」

つーか声大きいわよっ…!? と、必死になって加子の口を塞ぐ。
この時、明らかに声を大きくしてたのは私の方だったがどうかその辺りは何も言わないでくれると有り難い。
――ともかく、誰も今の話を聞いていなかった事を辺りを見て確認してから、ゆっくりと彼女の口から手を離す。

「……第一、ユニフォームは私達にとっては正装なんだから。…そんな、見せ衣装みたいな認識で使う事自体が間違ってるってば」

はふりと溜息を付いて、ずれてた眼鏡を押し上げながら心持ちはっきりした口調で私はそう彼女に返した、が――。

「…………ふーん。そんな事言うんだー? ……ふーん…。」

淡い黒髪を揺らしながら、加子がじーっと私の方を見る。
何やら酷く怪しげな目で、横流しの視線を私に浴びせてくるので「な、何よ…?」と思わず聞き返したら


「……テニス部以外の子にテニスウェア着せて楽しんでたクセに。」

――ぎく。

刹那、何もかもが固まった。
聞えた擬音を例えるとすれば、きっとそんな擬音だ。 ちなみに誰から?……無論私からである。

「この前更衣室でさー。楽しそうに、わざとスコート短いヤツ着せて楽しんでたの誰だっけかなぁー…? 
  …しかも誰に着せてたと思うー? 議会の人よー、議会の人ー。」

――――ぎくぎく。

「と言うか、しーなさんって何気にずるいですよねー? 議会の人に知り合いが居てさー? 
 挙句、希少って言われてる男子陣とも面識あるみたいだしー?」
 

「…何ー? もしかして、私達差し置いて良い所取りしてるのー?……してるわよね? し て る わ よ ね ?」

―――――ぐさぐさぐさぐさぐさっ!!!!

何故だろう。
後者になればなるほどやましい事は無い筈なのだが、彼女の言葉が私の心を抉るように放たれる。
……何?もしかして、アンタ『言葉を針にして心に突き刺す異能』でも持ってるの?そう言う異能者だったの?
負けじと加子を睨むも、冷や汗が止まらない。それ所か、それほど恐い顔が私は出来ていないらしい。
非常に余裕綽々な表情がなんとも憎たらしく思う。

「はっはっは! 真っ向から動揺しちゃって…相変わらずわかり易い子よねーん?」
「う、うっさい!第一、何でアンタそんな事知ってるのよ!? 覗いてたわね!?」
「当り前でしょーが。更衣室で鍵もかけずに楽しんでたそっちが悪い。
 …ああ、でも鍵が付いてたら…それはそれで、場合によっちゃもっと『いやん』な話が流せたか…惜しい(チッ)」
「惜しいって言うな! てか、一体何を流す積りよ何を!?」
「『錦織さん、そんな…それ以上は…!あ――。』『ふふ、可愛らしい…もっといい声聞かせなさい、な…?』
 そんな話しを一時間程……あ、まだ続けてほしいー?」
「続けるな! ていうかそれ以上話しをややこしくするなーっ!!」

必死にラケットを振りまわしながら彼女を追いかける私は、この時全身真っ赤だったのだろう。
何せある事ない事言われて羞恥心は絶好調だったのだから。
そんな私を嘲笑うかのようにくねくねとステップを踏みながらひらりとかわすパートナー。
かわす。かわす。かわすったらかわす。――ああもう、さっきからそんな一人だけ楽しそうに…!!

結局その後、私は散々からかわれながらも一度として彼女を捕まえる事は出来ず。

 

「ちょっと!そこ!! 何してるの!! もう休憩時間は終わってるわよ!?」

この後そんな私達を見つけた先輩の一人から、しこたま注意を受けたのは言うまでもない――。
<とある庭球部の日常>

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
その頃、屋上。
「…何やってんだかなあ、ありゃ。」
缶珈琲片手に眼下を見下ろせば、良く見知った姿がラケットを振り回しながら同級生と思しき姿を追いかけている。

「まさか希少呼ばわりされてるとは思わんかったけどな……
それはさておいても、良識の範囲なら露出なんかしたって別段
問題なんぞ無かろうに。」







「俺は、一向に構わん。」

そういう問題では断じてないのは言うまでも無い。俺だって分かっている。
それにしても聴力を調整すればこの程度の距離でも聞こえるとは、
中々便利な身体だと実感しながら、俺は椎那が叱られる姿に暫し笑わせて貰う事にした。

嗚呼、今日も珈琲が旨い。





何やってるんでしょうね私。(真顔で。)
リヒャルト 2009/05/11(Mon)20:07:45 編集
(へっ、きし!!)
「――――…やれ。風邪、か?」

(教室で予鈴を聞きながらくしゃみをする奴がいたらしいですよ。)


(そんなわけで初カキコなのでした。ごきげんよう。。。)
その頃の噂の。 2009/05/13(Wed)00:36:27 編集
(そんな彼等の一部始終を)
てくてくと屋上まで歩いては、じーっと彼が笑っている所を眺めてたり。
教室でくしゃみをしていた彼女の隣に何時の間にか立って、ちり紙差し出してたり。
ライラの色んな場所で歩きまわっている人形の姿が、そこにはあったかもしれない。

で、結局の椎那はと言うとその後はボール拾いを言い渡されてコートの外まで探しに言ってたとさ(…)

>リヒャルト君の保護者様
――何、気にする事はない。
(私も貴方のブログに似たような事をした)(…)

>初カキコしてくれたお方
どうもいらっしゃいませ…!
諸々のお礼も含めつつ、今後ともよろしくなのですよ…!
すぴか 2009/05/17(Sun)23:21:30 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
フリーエリア
最新コメント
[08/17 らいす]
[08/17 ひか。]
[07/18 らいす]
[07/18 悪戯。]
[05/27 らいす]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
らいす
性別:
非公開
自己紹介:
がくせん関係者様であればリンクフリーですよー。
バーコード
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]