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もうやっちゃえ書いちゃえ推敲なんざお断り! な、ノリで流行りに載る。
相も変わらず、乱れまくってる文章にはご注意下さい(…)
切欠はほんの些細な事だった。
そのおばさんとはたまたま近所で挨拶をする程度だったけど、よくお菓子を貰ったりして御世話になっていた。
いつもいつも柔かく笑ってくれては、何時も僕に構ってくれてたんだ。
だから、何時かそんなおばさんに何か御礼がしたいと思ってた――。
だからそんな御世話になっていたおばさんの愛犬が死んだと言う話を聞いた時、真っ先に僕の体はその場所に向かっていた。
――本当に、あの時はただどうにかしたいって言う一心で。
何の根拠も無いのに、ただ勢いと即断力だけは誰よりも突き抜けていた幼少時代。
誉められる部分もあったし、時として注意される事も、平等にあった。
故に、善悪すらも判らなかった――。
部屋の階段を登って父が何時も綺麗にしていた書斎の棚を開いては、一冊の本を見つけて取り出す。
それは医者であり、魔術師である父が常に大事にして居た本。この本の力を借りれば、まだ間に合うかもしれない。
希望に満ちた瞳で、僕はその本の文字達に指先で触れる。
それが何の本だったのかなんて、判らないくせに。子供だった僕は夢中で自分を本に繋げる。
じわりと広がる、光と熱。――あふれんばかりの、見えない力が僕の体を満たしていく。
そしてその光が、段々と周りを歪めていって――。
… …… あ れ ?
どう、した ん だろう 。 からだが あつい。
あふれる なにが ? でてく る
あ つ い ―― く
る
し、
い … ?
え ?
え? な、
に ?
めのま え が
ま
っしろ
に な て 。
刹那、もっと大きな『何か』が僕の体を突き破るように溢れるのを感じて。
最後、書斎のドアを開けて目を見開いている母の姿が見えたのを最後に僕の意識は途切れた。
………この時、僕はまだ知らなかったんだ。
これが切欠で…犬の一匹を救う所か、大切な家族の一人を失う事になるなんて。
<―――消せない罪と、消えない傷と>
家族は良い物であり、大事にすべき物。それが世間の常識だ。
親は子を全身全霊で育て、慈しみ、愛して見守る。
そして子は親を敬い、言う事を聞き、愛して支える。
――それもまた世間で言う所の当たり前。
「…………」
ほんのり灯る月明りだけが、ぽっかりと開いた暗い空間に見えている。
窓の外にはあんなにも、鮮明な夜空が見えるのに。
窓の外には今日も心地よい風が空を泳いでいると言うのに。
何処か、求めるように手を伸ばしても届かない景色の中。――微かに聞えるのは何だろう。
嗚呼、そう言えば今日は町中で花火大会があるって行ってたよなぁ…。
姉貴と一緒に、行くって約束してたっけ。
けど、なんで俺こんなところに居るんだろう―――?
どーん ぱらぱらぱら …… どどーん …… ぱらぱらぱら 。
遠く遠くで聞える軽やかな轟音。
―――だけども少年の下に、光は届かない。
どーん ぱらぱらぱら …… どどーん …… ぱらぱらぱら 。
だからじっと暗闇で目を閉じて、幼い少年は想像した。
――色鮮やかな花火が夜を彩る瞬間を。 そして、それらを見てはしゃぐ人達の姿を。
きっと、きっと楽しいんだろう。 明るいんだろう。 思い出になるんだろう。
試しに、今度は自分がその場所に歩いて行く様子を想像してみる。
もしかすれば、目を見開いた瞬間、その場所に居るんじゃないかって、思って――。
じっと、じっと、目を閉じて 百数えて目を開けてみた。
するとそこは――。
「………」
やっぱり、暗闇で覆われた蔵の中だった。
少年は何もかもを自分で選んだ事が無かった。
部活動も、夜遊びも、地域行事も、友達さえも家の言う侭に決められて。
相応しくないと言われれば止めさせられ、挙句学校の授業まで休まされる毎日が当たり前。
今日だってそう。 理由なんて無い。 ただ相応しくないから。 それだけだった。
ずっと、ずっと、そうだった―――。
「……っ、… …ん な …」
嗚咽の混じった、響きで乾いた口が動く。
家族を愛するのは当たり前?じゃあこれも世間で言う「愛」なのか?
――ただ少し、口答えをしただけで牢屋同然の世界に放りこまれて反省しろだなんて。
家族に尽くすのは当たり前?産んでくれたから。育ててくれたから?
――だから俺は自分の行く先すら決められないまま、一生親父や御袋の言う事だけ聞いて生きれば良いと?
血筋だから。習しだから。
ずっとやってきた事だから跡を継がなきゃ行けないからそもそも逆らうなんて愚かだから息子だから血筋だから――。
「 ―― ッッ っざっけんなあああああッ!!!!!!」
ダァァアアン……ッ!!!
手近な壁に振り上げた拳を叩き付ける。それでも、非力だった少年の拳は壁に傷を付ける事も許されず。
じわりと広がった鮮血が、ただ破れなかったと言う結果だけを示して無情に滴る。
体も心も、摩擦しきったその瞳が映すのは。外の世界への羨望。
それは何時しか、自らを縛る者達への憎悪へと変わった。
ただ、ただ羨ましかった。外の世界の事が。
ただ、憎かった。憎くて憎くてたまらなかった。――何もかもを奪う者達の事が、何も出来ない自分自身の事が。
けど、いくら叫んだ所で何かが出来るわけもなく。そして自分もそれが判っていたから。
当時幼いだけの少年は、そこでただ感情の侭叫んで、感情の侭ただ泣くしかなかったのだ――。
<――庭知らずの夜>
幼かった誰かの、幼かった過去のお話。