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気ままな誰かが気の向くままに何かを書く場所。PBCサイト『真!学園戦国伝』に居る誰かの住処。
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けど、今回はたまたまそうなっただけなのかもしれない―――。


疲れた時、迷った時には休むのが一番である。ついでに甘い物。
それは疑いようも無い事であり、丁度休息を欲していた自分にとっては有り難い話だった。

「それにしても良かった…お花が無事で。 これが無いと、ホワイトデーのお返し…出来なくなっちゃうから」

目の前の席にいる青年は自分で買った花…積もる所、少年とぶつかって落とした花を丁寧に纏め直して居た。
喫茶店の中、束にされた其れをわざわざ手直しするのだから余程大切な物なのだろう。
…いや、確かに自分でお金を払って買った物は等しく買った当人にとっては大事な物であるが。

「へぇ、なるほど。…ホワイトデーっすか。」
「うん、ホワイトデー。 バレンタインで貰った気持ちに感謝の気持ちを返す日。…って、言ってもちゃんとした贈り物が出来て居るかどうか、毎年不安なんだけどね。」
「それはつまり、毎年貰える相手が居るって事で?」
「うん。 …あ、けど恋人さんって意味じゃないよ? 妹から、だね。」

ぱたぱた手を振りつつ、少しはにかんだ様子で青年は少年の答えを否定する。
――そんなやり取りを少し交わして、ようやく彼もまた目の前のパフェにスプーンを差した。

あれからぶつかってしまったお詫びと、自分自身の休憩も兼ねて近くの喫茶店へ青年を誘った。
さすがに突然の提案だ。多分断られるだろうとも思っていたが、意外な事に青年の方は二つ返事で是非と答えてくれた。
――どうやら面識の無いタイプでも機会さえあれば、積極的に交流を持とうとするタイプらしい。
にこにことパフェを頬張る様子に滲み出たお人好しオーラを感じて、思わず少年も何処かつられて口元を緩める。

「…まぁそんなわけで、僕も色々と物色して回っている最中です。――君の方はどうなの?」
「え? 俺? …あー、まぁなんつーか、その…」

言えない。そんな言葉が脳裏に浮かんだのと一緒に、頭の何処かで変に汗が出た。
例年問題無く、こう言うイベントに対応してきたというか上手く付き合ってきた自分が今頃になって袋小路になってるだなんて。
まさか。 いやはやまさか。 
めまぐるしくどう切り返そうかと頭で考えながら、体裁だけでも取り繕おうと涼しげな表情を作ってみる。
将来の目標はクールな大人になる事だ。 故にその夢に向けて努力してこれたか否か、今その真価を問われている時だと一人決め込んで。
さぁ行け。ここで冗談の一つでも叩けば、状況は好転する。 戦いは先手必勝――そう、意を決して口を開いた所で

「…もしかして、どんなお返しにしたらいいのか悩んでるとか?」

ごつん――。 
こちらの思惑よりも彼の直感が勝った結果、少年は盛大にその額を勢いよくテーブルに打ち付ける。
世界はそんなに甘く無かった。
『あ、あれ? 僕なんか変な事言った…!?』 対し、目の前で突如前触れも無く突然の奇行に走った少年を見て青年は盛大にうろたえている。
例によって例のごとく、周りの客や従業員が何事かとこちらに目を向けて居たが当の二人は気付かない。
――どの道、気付いた所で放置するのが関の山であろうが今問題はそんな事じゃないと、ひとまず少年は頭を上げる。

「…そーっすよ。お察しの通り、ちょっとばかり悩むと言うか目移りするっつーか迷うっつーかドツボにはまってやがりますよ畜生」
「ご、ごめん。 け、けど…な、何もそこまでいじけなくても……。 ほ、ほら、やっぱりこう言うのって普通は悩むしさ。ね?」
「いや、別に悩んでる事に参っているわけじゃなくて。 …まぁ、今まで変に悩む事無く贈り物決める事が出来てた分、何で今回はこんなに迷ってんのか判らねぇのもあるけどねぇ…」

嗚呼――。結局己は、一体何を言いたいのだろうか。
素直に、今回ばかりは悩んでいると言えればいいのに。――邪魔をしているのは他でもない自分の意地。
無論、今知りあったばかりのこの青年に何もかも打ち明けるのはどうかと思うのもあるのだけれど。
考えるよりも感じろと、悩んだ人間には言いがちな己。けど案外自分も、こう言う時に他人の事は言えないのかもしれない。
少なくとも今は。 そう、今だけは。


「……月並みな台詞だけどさ。」

不意に、頭の上から言葉が降ってくる。

「君がそうやって悩んでくれてる事その物が、立派なお返しにもなってると思うんだけどな?」
「…へ?」
「や、だってさ。それって――。」

くすり。何処か静かな笑みを携えて、瞼を細めつつ彼は続ける。


「――それだけ君がその人の事、大切に思ってるって証拠でしょ?」


無邪気な声音で紡がれたその一言で、少年は久しぶりに敗北を喫したという。

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